午後、喫茶店に入ってアイスのソイラテのLサイズを頼んで、
なんとなく行きがけに本棚から掴んできた文庫本の
百田尚樹「ボックス!」を開いたら止まらなくなった。
結局、最後残った氷が溶けた水をストローですすりながら
下巻読み終わるまでそこにいて、気がついた頃には辺りは夕暮れ。
2年ほど前にも一度読んで、その時はストーリーに感涙したぐらいの記憶しかない。
今回は、どちらかというと、ボクシングを始めたばかりの主人公が
コーチから教わるジャブやストレートの打ちかたとか、
はじめてスパーリングしたときのグローブの重さとかパンチの届かなさとか、
試合の時の動きの詳細みたいなところばかり残った。
文字情報だとよく分かる。
この物語は、器用で才能ある子と努力型の子が
同じボクシング部で育っていく過程の対比で書かれている話なんだけれども、
その子たちを見ている顧問の先生の言葉が今日の収穫だったのかもしれない。
「才能のある子は努力の喜びを知らない子が多いのよ。出来ないことが出来るようになる喜びを知らないーある意味でそれは不幸なことやと思う」
才能がないからこそ、出来ないことが出来るようになる喜び
―それはもう純粋な自己満足の世界で、他人に蹂躙される余地のないものだけど―
を、すこしずつ、貯金箱に貯金していくみたいに蓄えていける。
それは、とっても幸せなことなのかもしれない。
自分の限界を少しずつでも、今より遠くにもって行けたら。
ただ、それだけ。