2022/07/16

3年

少し前の話だけれど、スタジオで以前の公演で使われた曲が流れていて、まだこの頃はご縁がなかったよね、などとお声がけいただいた。ハイわたしは先生の引退公演がはじめてです、とお答えしたら「ああ、あの詐欺ね、今のほうがコンディションいいから」みたいなことをサラリとおっしゃった。

2018年夏の終わり頃、はじめてジムの土曜夜のジャズのクラスに行って、なんだか面白そうだから頑張ってみようかしらと思ったその2ヶ月後ぐらいに、舞台からは引退しますと言われた生徒の身にもなってみてほしい。ダンスの公演などというものには縁遠く、あー、劇団四季を遠い昔に見たっけなぁ、ぐらいの人間だし、そもそも人見知りなので、見知らぬ場所のよく知らない先生の踊りをわざわざ見に行くべきか、けっこう迷ったと思う。舞台は最後だということだし、見ずに後で悔やんでもいけないからと思って足を運んだ。当然ながら行ってよかった。というか、たぶんそこに行っていなければ今のじぶんはない。なので、その時の曲はやはり思い出深い。

2019年夏頃、先生は踊られなかったけれど同じ曲で作品を出されるにあたって、スタジオのレッスンも同じ曲の抜粋で教えていただいた。勇気を奮い起こしてコンテンポラリーなるものを習いはじめたのがこの年の春のことで、床をゴロゴロ転がるフロアなるものを習ったのもはじめてだったから、全然できなかったのだけれども、思い出深い曲を習うことができて、とても嬉しかったのだけは覚えている。

それから約3年後の今日、振付は違うけれど大好きなこの曲で踊ることができて、じぶんの出来はともかくとして感無量。3年前は、苦手です、目が回るし立ちくらみもするし、方向を失って先輩にぶつかりそうになるし、立ったり座ったりがトロくて音に間に合わないし、などとしか言えなかったフロアも、下手なりに好きになった。あれほどあちこちに青あざを作って密かに痛い痛いと唸っていたのが嘘のような、レッスン後の快調さだけは進歩と言えるだろうと思う。

不肖の生徒としましては、なんだかんだ先生を元気にしてくださっている先生の先生にも感謝の念にたえません。