2011/03/07

(1)Young, still young

長くブログを更新していなかった。
いろいろ理由はあるけれど、そんなことはどうでもいいような気もする。


サイパンに行こうか、と最初に思ったのは、去年のこと。
長年の運痴歴と運動不足を棚に上げて、少しジョギングできるようになったのをいいことに、11月にはじめて川越のマラソン大会にエントリーした。
お定まりの練習不足で13km1時間45分の関門を越えることができず、その時は脱落者用のバスに乗ってすごすごと帰った。
それまでグーグルマップのアバウトさのせいで、1キロ6分半ぐらいで走れると勘違いしていたのだが、実は優に7分半を回っていることが分かった。

国内のマラソンは、大抵ハーフを2時間半以内に走るべし、となっている。よく知らないが、たぶん、それより長時間交通規制するのが難しいんだろう。
普通ならここで「もっと早く走れるように練習を」となるはずだが、何事も無理をしない私の場合は「もっとのんびり走れる大会に出ればいいや」となった。

サイパンマラソンの大会要綱には、フルは4時30分に、ハーフは5時45分にスタートする、と書いてあるだけで、制限時間は書いていなかった。(と思う。でもレース前日に受付でもらったパンフレットには11時半になったら撤収しますとあった。でも、まあ、いくらなんでも5時間あれば間に合うだろうし。。)

これなら完走できるかもしれないな。
と思いながらも、いざ有給を申請してチケットを買おうとした頃には1月も終わり、レース1カ月前になっていた。

顔しか知らない間寛平さんという芸人さんが病気を持ちながら地球一周マラソンを達成して、記念にサイパンマラソンにも走る、という話で、「一緒に行こう」という趣旨のツアーも組まれていたらしい。
よく分からないけれども、それが人気らしかった。
直行便のチケットは、もう売り切れていた。
グアム経由便は真夜中の乗り継ぎ。煩わしい。睡眠不足のまま走るなんて最悪。
木曜の夕方、仕事を定時で上がって、深夜便で現地着。金曜の夕方、レース受付。土曜朝5時45分スタート、完走者パーティの後、土曜の深夜便(というか日曜の早朝便)で帰国。
よく考えてみるまでもなく、あわただしい道中に違いなかった。
ここであきらめるかと思いきや、障害があると燃える。ほとんど単なる意地である。


出発が近づくにつれ、仕事はなぜか今までにないほど忙しくなっていた。普通なら休めそうもないところを、上司に恵まれて、がんばってらっしゃいと快く送り出してもらった。

20時50分発だったはずのフライトはいつの間にか出発時間が早まっていて、おまけにチェックインは長蛇の列だった。両替をして、保険を申し込もうとしてふと時計を見ると、もう搭乗時間を10分回っていた。ゲートに駆け込む。海外で携帯を使えるようにするのも忘れた。ふと思い出して父に携帯メールを打つ。「突然ですがこれからサイパンに行ってきます。今飛行場なので、もう携帯通じなくなります。帰国後に連絡します、取り急ぎ。母上によろしく」
一人娘とは思えない愛想のなさ。何もかも慌ただしい。

夜中というべきか、早朝と言うべきか、グアムに着く。
時差は1時間。念のために持ってきた会社携帯はGPS機能がついていた。待受画面に現地時間と日本時間が並べて表示されている。へえ、便利になったもんですね、と妙なところに関心する。でももともと使うつもりもない。
空港は冷房が利いているせいで長袖を着ていても暑くはないが、出国時と同様に長蛇の列、おまけに遅々として進まない。眠い。トランジットの時間は迫っているし、なにしろ眠い。ようやく入国審査の順番になった。両手指の指紋と写真を取られる。なんだか気分が悪い。ルーチン化されたプロセス。定型の質問と答え。「Business?」一瞬の沈黙。「カンコウ?」「はい、観光、観光」「Only you?」捉えようによってはイタい質問に苦笑。「はは、Yes, Only me.」おねえさんも少し笑う。最後に彼女はパスポートを渡しながら言った。「Happy birthday」


トランジットの案内をしてくれるおじさんについてゲートに向かう。
おじさんも誕生日を祝ってくれた。
「You are young」
「え?」
おじさんは念を押すみたいに言った。
「Young, still young」

39歳になった。グアムの空港で。