2016/05/07

足の遅いランナー

北村薫『詩歌の待ち伏せ』を読み返している。
ハリネズミの子供がサボテンを母と感違いする外国のジョークを読んで、また、「猫の子に嗅れているや蝸牛」という句を読んで、クスリと微笑ましく可愛いと思ったというくだり。
可愛いという言葉の定義から、なぜ可愛いのかと考察していく。
最後に、理屈はいくらでもつけられるが、という文章にこう続く。
「この場合、思考は足の遅いランナーです。《はりねずみクン》や《猫クン》を見た瞬間にやってくる微笑みに、追いつくことは出来ません。」
最近、そんなことがあったような気がした。
そのとき自分を襲った感情の波のようなものは、あとからいくら理由づけしようとしても、上手くいかない。
ほんとうに大切なことは記録できない。
だから、「今、ここ」の感覚を大切に。そして、ときどき上手に思いだすこと、という茂木先生の今朝のツイートがふと浮かんだ。