2010/01/21

僥倖

オフィスに集荷に来てくれるのが、ひょろりと青白い顔をした「うらなり君」といった風情の20代前半ぐらいの男の子である。
昨日は夕方近くになってから一つ仕上げて、さて、あとはインボイスをコピーして封をするだけ、となったところで集荷依頼の電話をした。決まり文句で「準備はお済みですか」と聞かれるので、本当は済んでいないのだけれども、どうせすぐに集荷に来るはずもないから、「はい済みました」と答えて、電話を切るのが習慣になっていた。
たまたま昨日は、そこで電話が鳴った。ちょっと長めの話を終えて、我にかえったところで、背中に視線を感じる。目は口ほどにものを言う、というのは本当で、くだんのうらなり君が、「話が長いんだよオマエは」「準備が終わってないのに集荷電話するんじゃねーよ」といった風情で睨んでいる。その目を見て思い出す。こうして待たせるのは2回目である。ばたばたと準備を済ませて手渡したものの、さすがに悪いことをしたなと思っていた。
今日も、うらなり君がやって来た。「きのうは、ごめんねー」と、社内でもらったお菓子をいくつか渡したら、いえいえと遠慮しながら、いままで一度も見たことのない、にこやかな顔で笑った。空腹時に笑顔の不意打ちをくらったせいか、なかなかに刺激的。めまいがする。いや、単に、立ち眩みか。ともあれ、こんないい顔を見られるなら、またいつか、お菓子を用意しておこうかしらん。