2010/09/12

一村

昼ごはんを食べながら某氏のつぶやきを見ていたら、
田中一村展がいいぞと書いてあった。
26日まで。今日行かないとチャンスはなかろうと思って、
食後、そそくさと身支度して千葉市美術館に出かける。

千葉って、結構遠いんだ。
錦糸町で総武線の快速に乗り換える。
ブコウスキーも持参したが、目から何か入力しようという気にならない。
イヤホンをして、このところのお題であるMichel SandelのJusticeの
著者本人の朗読を聞きながら、揺られていく。

駅から歩いて10分あまり。
鮮やかな緑で南国の植物が描かれたポスターが入口で迎えるように掲示してある。
植物だけでなく、鳥も描かれるが、動物より植物のほうが、より動的に見える。
花びら、葉の1枚1枚が異なる表情を持つ。
紅がかった菊を見ていたら、次第にそれが短髪の女性の顔に見えてきたりする。
水墨画のような陰影もあり、シンプルな線が版画的、または漫画的でもありながら、
そこに思いがけず鮮烈な色が添えられる。
余白と配置の妙。
そして、画面の中から、何かの、または誰かの声が、
いやオースターいうところのVoiceとでもいうものが聞こえてくるようである。

このところ、休日になると文房具屋を見て回るという
かつての習慣が復活していて、
昨日もいくつか回ったのたが、
性格的に、さりげなく買いものを楽しむというような見かたができず、
気にいったものを見つけると、
つい手にとっては、じいいっと凝視してしまう。
1回では足りなくて、これを数回やる。
あんまり長いことためつすがめつしているせいか、
しばらく時間が経過すると店員さんが寄ってきて、
お探しですかなどと話しかけられる。
いえただ見ているだけでとも言えずに適当な作り話をするわけだが、
そこへ行くと美術館はいい。
お気に入りの作品の前をどれだけ行ったり来たり眺めていたって
誰も邪魔したりしない。

そう、展覧会の話だった。
説明書きはほとんど読まなかった。
そんなものはいらない。ただ、いいものはいい。

最後には「アダンの海辺」「不喰芋と蘇鉄」が待っている。
立ち去りがたい。
画集は色が悪くて求める気になれず、
せめてもの土産に特大のポスターを入手して帰る。