このあいだ、ある現場の見学に行ったとき、面白いことを聞いた。
時間制限を設定して、ある同じ作業を複数の人にやらせる試験をする。
同じ制限時間内で終わっていても、
AさんはBさんの倍以上の時間がかかっている。
「ずいぶん早さが違うものですね。時間をかける人の方が精度高いんでしょうか」
と監督者の方に尋ねると、
「いや、そうとも限らないですね。早い人の方が、作業にムラがない。
遅い人は、ムラがあるんです。ここはきちんとしてるけど、あそこはそうでもない。
それで何度も見直したり作業し直したりしなければならない。それで時間がかかる」
これは人の動きをよく見ている人でないと分からない貴重な情報である。
「精度高い」人の動きには、凡人と異なる何かがある。
ジムのレッスンに出ていても同じで、
美しい、もしくはかっこいい動きをする人は
凡人(私)と動きのディテールに、どこか(または、しばしば「「決定的な」)違いがある。
なので、「どこが違うんだろう」と、しげしげ見てしまう。
動きはじめのうちは、できないので真似するために見る。
動きをひととおり習得してしまうと、
(単に美しすぎて見とれている場合もあるけど)
意識としてはだいたい「盗もう」と思って見る。
見た目の「形」が違うことのもっと下には、
筋肉であったり、骨格であったり、機能性であったり、身体の使い方であったり、
もしかしたら精神面であったり、
そういった奥深いところの「違い」がある。
なので、いくら見ても見飽きない。
そういう意味では人間観察が趣味なのかもしれない。
(たぶん人間だれでも、ではなくて、ごく特定の、
キョーミをそそられる人に限られるわけだけど)
これは趣味の問題なので、仕事のように7割完成とかで終われるものではなく、
「完璧主義」の世界で、きりがない。
ささやかな楽しみ。