2019/12/01

先生の作品がかかるというので蕨に行く。
休憩時間、手持ち無沙汰だからアンケートでも書こうかと用紙を手に、これまでダンス公演を見た回数はとの質問を目にしてあらためて思い出す。子供の頃にバレエを見たのと少し成長してから劇団四季を見たのは別にして、こういった公演を見るのはこれで4回目。観るほうも初心者、ニワカというやつである。
今までは、目立つダンサーさん個人に目がいっていたのだけれど、今回はどちらかというと構成とか照明とかに目が行く。太宰的な印象で面白いと思った曲もあった。ただ逆にメッセージ性が強すぎる曲は肝心の踊りの影が薄くなるなあなどと思う。
人間のできる動きというのはある程度限りがあるはずだけれど、それが構成と演出の妙で心に残るものになるから面白い。印象的なものもいくつかあった。
やや斜にかまえてそんなことを考えていたのは後半も佳境に入るまでで、聞き覚えのある曲がかかって先生の作品が始まったら早くも涙腺が崩壊する。踊りのことはなにしろ初心者だし、深いことはよく分からないけれども、先生の作品は、作用する心の場所がほかのものと違うことだけは分かるのである。それは直接教えていただいているということを差し引いても多分変わらないと思う。
次の楽しげな作品に移った後も終演となるまではらはらと涙を流し続け、レッスンがあるからそそくさと会場を後にする。帰路、電車の中で、その曲をかけた途端にまた涙を流す奇妙な人になる。仕方ないのでしばらく音を切ってぼんやりする。
ほんとうにたまたま、先生に辿りついた自分は幸運だったなあと思う。
不肖の一生徒としては、手前勝手ではあるけれど、一日でも一回でも多く教えていただけるように、どうかどうかご安全にお過ごしくださいと願うばかりである。