2010/02/06

落とし穴

ぼうっとテレビを眺めていたら、トヨタのリコール問題の話になって、他人事と思えずマジメに見てしまう。マスコミはあまり言及しないが現場にとって極めて明らかなのは、大規模リストラが品質に及ぼす影響である。それはきっと、オフィスに鎮座ましましている人たちには感知できないところからひたひたと波のように寄せてきている。某社で社長職を廃止したという挨拶状を出しているのを見たが、上からリストラする姿勢は悪いことではない。品質を落とさない努力というのは、いわゆるシモジモの者がやっているのであって、そういう心ある人たちを「お金の問題」によって、ざくざく切っていくと、必ず見えない技術、品質上の劣化というしっぺ返しを受ける。そういう覚悟と予測をもって人を切っているのか。それは長期的にはブランドの信用凋落、売上を失うという、いつもそればかりが問題にされている「お金の問題」となって返ってくるのである。よくよく再考すべきである。

テレビのコメンテーターが、グローバル調達によって、部品ごとの調達を価格重視でいろんなところからしていると、それを統合して製品として出来てきたときの問題点が見えにくいのではという意見を出していた。ほんとうに、その通りである。一個の完成した製品としての身体性というべきものが現場で捉えにくくなっているという事実。そういう現実に、今回のトヨタ問題から翻って自社体勢の問題として気づく人がいるのだろうか。いてほしいと祈るばかりである。

そこにもってくると今日のビジョンEの結びのコクヨの話題は良かった。コクヨのドットつき罫線ノート(ヒット商品で東大ノート、とかいうらしい)開発に携わった若手社員の話。帰宅に電車を使わず文具店を回って徒歩で帰るという。コクヨでは顧客ではなく個客と書くのだという。ユーザーひとりひとりが様々な意見を持っている。それを直接訊ねることによって引き出してくる。そういう地道な仕事ができる環境をこのご時世でもしっかり提供しつづけている会社の経営方針は見習うべきものがある。