2019/10/27

騎士団長殺し

確か5月の連休に読もうと思って買った文庫の村上春樹『騎士団長殺し』。このところ毎週土日に今日こそはと持ち歩いてはいた。つまり持ち歩いていただけだった。けれど、進むときは一気に進む。金曜の夜から第1部の2冊目(全部で2部4巻)から頁をめくり始めて今終わったところ。思わず狭い自室内をきょろきょろと見まわし、部屋の隅あたりにでも騎士団長が現れていないか確認する。
自分の場合、読後感はだいたい引用になる。ごく主観的、我田引水的、順不同な引用。

「でもまったく正しいこととか、まったく正しくないことなんて、果たしてこの世界に存在するものだろうか?我々の生きているこの世界では、雨は三十パーセント降ったり、七十パーセント降ったりする。たぶん真実だって同じようなものだろう。三十パーセント真実であったり、七十パーセント真実であったりする。その点カラスは楽でいい。カラスたちにとっては雨は降っているか降っていないか、そのどちらかだ。パーセンテージなんてものが彼らの頭をよぎることはない」

登場人物の女の子が自分に似た名前だからかもしれない。その子はある絵を見て思う。
「この絵はわたしをどこか別のところにつれていこうとしている、正しいとか正しくないとか、そういうキジュンとは違うところに」
そういえばわたしも最近そんなことを思ったことがあった、かもしれない。そんな彼女に騎士団長は言う。
「よく耳を澄ませ、よく目をこらし、心をなるたけ鋭くしておく。それしか道はあらない。そしてそのときが来れば、諸君は知るはずだ。おお、今がまさにそのときなのだ、と。」

「この世界に確かなことなんて何ひとつないかもしれない」
「でも少なくとも何かを信じることはできる」