2009/11/15

機の思想

新装開店した山種美術館に速水御舟の炎舞を見に行く。
間近で見た蛾の羽は、炎の中で、焼けそうというよりも、端から溶けてしまいそうに見えた。
右端の一匹の羽は、写真にすれば随分青みがかって見えるが、実物の青は、もっとずっと、霞んでいた。この1枚だけ2回、じっと見て、あとは殆ど遠目に眺めるだけで会場を出た。
御舟は31歳で炎舞を描き、40歳で亡くなった。
駅に向かって歩きながら、昨日読んだソンタグの言葉を思い出す。
「本物の芸術はわれわれの神経を不安にする力をもっている。だから、芸術作品をその内容に切りつめた上で、それを解釈することによって、ひとは芸術作品を飼い馴らす。解釈は芸術を手におえるもの、気安いものにする」(スーザン・ソンタグ「反解釈」より引用)


恵比寿駅の喫茶店で、持ってきた「日本辺境論」を読む。行きの電車の中で1章を読み、その後とばして3章「機」の思想を読んだ。これまでの人生において、確かに、世界の中心は今自分のいる場所ではない、と思っていたから学ぼうとしてきたし、今も「遅れてきた人」であり続けているせいか、沁みるのである。
「「学ぶ力」とは、「先駆的に知る力」のことです。自分にとってそれが死活的に重要であることをいかなる論拠によっても証明できないにもかかわらず確信できる力のことです」(内田樹「日本辺境論」より引用)
あやうく泣きそうになって、いそいそと喫茶店を出る。新書を読みながら泣きそうになるなんて、怪しすぎる。

新宿で買いものをして家に帰り、走る。
日中陽がよく照っていたせいか、今日は半袖でも外に出られる。
5km、31分10秒。がんばった。