2009/11/29

箱根

三浦しをん「風が強く吹いている」を読む。
著者については、名前以外全く聞き覚えのない人だったし、駅伝がテーマじゃなかったら絶対に読まなかったと思うけれども、ひとまず映画を観るか決める前に原作をチェックしようかとブックオフで買ってきて、遅めの昼ごはんを食べながら読み始めたら、いつの間にかひきこまれてしまって、後半あたりからは、もう、殆ど泣きながら、いま読み終えたところ。

キャラクターは、実在の誰かと意図的にオーバーラップさせている感もあり、それでいて、どこかの書評にあったように「ありえない」「ファンタジー」的展開ともいえるが、それでも強引に読ませてしまうのは、箱根駅伝そのものの持っている多層的な意味合いをしっかり切り取っているからではないかと思う。
チーム競技であること。出場者が大学の学生であり、駅伝という中途半端な距離設定のせいで、ある程度選手の実力に幅を持たせることができ、この駅伝を必ずしもプロへのステップとしない選手が参加できること。

箱根において、目に見えるゴールは一つだけれども、その「ゴール」には、参加した人それぞれの意味がある。そして、ゴールを越えても、その先も道は続いていく。

その先に何があるのか、そこを越えると何が見えるのか、いまだ分からないけれども、どうも行ってみたい、行かずにはいられないという衝動をかかえている人にとっては、また、実際に、何らかの形で走っている人にとっては尚更、きっと共有できるものをこの本は、まあ、なんというか、あまりに爽やかな青春小説的な味付けではあるけれども、提示してくれている。

次の正月も、きっと、テレビで駅伝を見てしまうだろうな。