2009/12/24

ツリー

オフィスの鍵を持っていないので戸締りができないから、「最後の一人」になってはいけないのだが、自分が止めると複数の締切を破りまくる可能性のある仕事が、朝、メールボックスに溜まっている。夕方6時に帰るために、めったに出ない集中力を発揮せざるを得ず、他人から声をかけられても気がつかない有りさま。そんな中、外人からは、イラストを貼ったお気楽グリーティングメールが届く。あなた、作るの好きなのね、という人は、凝りようで分かる。でも確か去年、ITから禁止令が出たはずだけど。そんなの、誰も覚えちゃいない。眺めながら、謹賀だの御慶びだのとは何か明らかに違う空気をはらんだ、Wish とかMerry とか、happy といった言葉の軽さが好きだな、と思う。

努力の甲斐あって6時に会社を出る。気持ちが急いていたせいか、真冬用のコートが少し暑いぐらいに早足になっている。駅が近くなったあたりで、今来た方角に携帯を向けている人に気づく。振り返ると、順天堂病院の高いビルに、何か三角の模様が浮かび上がっていた。よく見ると、カーテンを閉めた部屋と開け放しの部屋とのコントラストで、上手にツリーがかたどってある。デパートか何かで似たようなイルミネーションを見たことがあるけれど、そこが病院であるせいか、何か違うものを感じる。管理スタッフとか看護婦さん、もしかしたら入院中の患者さんが「この部屋はカーテン開けといて」「ここは閉めて」とか、するんだろうか。あたりまえだけれど、院内にいる人には、あのツリーは見えないわけで。道行く人のために、あの中にいるひとたちの、きっとひとりではない、たくさんの手が、カーテンを開けたり、閉めたりしてくれたんだ。通りすがりの、わたしみたいな人間を、ひととき、ふと振り返って微笑ませるために。そう思ったら、なんだか、とても、ほっこりした気持ちになった。