2009/12/03

二次無効

職場近くの病院に行く。
いつも3時間待ちなど普通、という混雑ぶりで、仕方がないから、採血を終えたら病院を出て、明大の方向に下っていって、三省堂で立読みをするのが習慣となっていた。
土曜に通院していたのだけれど、最近、同じ先生の診察日が平日にもあると分かったので、平日に変えてもらって、これが2回目。
職場から徒歩5分圏内なので、昼休みに検査して、会社に戻って、しばらく働いてから早退する。それで、待ち時間は、ぐっと減る。
前回は、空いていた。今日は空いてますね、と言うと、先生は「そう、奇跡的に。」と言った。妙に実感がこもっていて、記憶に残っている。でも昨日は、やたらと混んでいた。おまけに、先生の患者さんの待ち人数だけが、ほかの先生の倍ほども多い。
初診専門の女性の先生が、私が「前にかかっていたお医者さんと合わなくて」と言ったのを受けて、「たぶん、この先生は、まあ、ほかの先生より少しは、ましだと思うから」と言っていたっけ。やっぱり、良い先生には、たくさん患者さんが回ってしまうんだなあ。先生、たいへんですね、などと思いつつ、待合室で、ぼんやりとテレビを眺めていた。

先生は、私がジョギングしているのをほめてくれた。「いやあ、がんばってますねえ、ぼくにはとても、できないなあ」などとおっしゃる。ふつうのお医者さんは「ぼくにはとても、」なんてことは言いそうにないので、なんだか可笑しい。「一昨年あたり、試しにジムに行ってみたんだけど、続かなくて。」なんだか、診察というより、知り合いの会話みたいなのである。
ひとしきり話して、検査結果の画面を眺めながら、先生は、うーん、と言って、黙ってしまった。前回より若干、数値が悪くなっていたせいである。
やっぱり、わたしって薬がきかないひとみたいですね、と言うと、そうだねえ。そう思いたくなっちゃうよねえ、と先生は言った。薬の名前を2つ書いて、もうすぐ新薬が出るからね、それ飲めば効くかなあと思うけど。でもね、治験もやりましたけどね、確かにぐっと下がりましたけど、個人的にはどうも、好きじゃないんだよね。長い目で見たときにね。アメリカでもまだ4年ぐらいしか経ってないから、まだこれからどうなるか、分からないんだよね。
先生は、つと立ち上がって隣の部屋に行き、ガイドブックを持ってきて、ぱらぱらとめくって、また、うーん、と唸った。ナントカは正常値だなあ、とか言って、また悩んだ。

ほかの先生の部屋はもう、ちらほらと「本日の診察は終了しました」なんて看板が下がり始めているのに、先生は、のんびりなさっているのである。

仕事や時間に追われているときに、平常心を保つのは難しい。自分自身は、より以上のことを抱えていながら、他人に鷹揚に接することができる人を尊敬してしまう。良い先生にあたって、よかったなあ、と思う。

結局、4ヶ月前頃、もう少し症状が悪かったときの治療法に戻ることになった。